今、個人的に注目している再生医療・幹細胞について|美容皮膚科医としての見解
私たちは、日々患者さんに綺麗になってもらいたいという気持ちをもっています。
そのために、数ある治療の選択肢、そして患者さんの状態から「この人にはどの治療は最適なのか?」を考えなければいけません。
また、今後の医療の進化によってもっと良くなるものもあるのではないかと模索しています。
そこで今回は、私が個人的に現在興味をもっている治療についてお伝えしていきます。
再生医療の普及で、諦めざるをえなかったものを変えるかもしれない
ずばり、今私個人で興味のあるものは、再生医療です。
なぜなら、再生医療は、これまで治せないとされていたものが治るようになる可能性があるからです。
たとえば、何かしらの事故や病気によって神経が死んでしまった場合、リハビリでどうにかすることはできても完全に再生はできません。
しかし、再生医療であれば、神経を再生するということが可能になるかもしれません。
ある大学では「交通事故で背骨を折って神経を損傷した際にも、再生医療を用いればある程度までは再生できるのではないか?」という研究もされています。
もしもこの研究が立証されれば、これまで諦めざるをえなかった多くの病気などが改善するようになるのではないでしょうか。
再生医療についてはまだ未知数の部分もありますが、患者さんのお悩みを解決する一人の医師として、今後も注目しておきたい分野です。
幹細胞は皮膚科として注目しておきたい
最近気になっていることのひとつに、幹細胞を使った皮膚の治療があります。
特に肌のハリや老化に対するアプローチとして、どこまで有効なのかを、自分自身の興味も含めて少し探っているところです。
皮膚に効かせたい場合、やはり皮膚に直接アプローチするのが基本になります。
たとえば、クリームとして塗布する形であったり、より深く届けたいなら注射や導入という方法もあります。
肌に塗るだけでもハリが出やすくなったり、老化の進行を抑える効果があるのでは…という期待はありますが、正直なところ、現時点ではその効果がどの程度なのかはまだ読みきれていません。
幹細胞はどのようなものなのか?
幹細胞と皮膚については、いまいちイメージしにくいかもしれません。
あくまでイメージとしては、今ある自分の皮膚細胞たちが刺激を受けて、若かったときのようにまた頑張って働いてくれるようになるようなイメージです。
例えですが、細胞が「もう一度スイッチを入れ直す」ようなイメージに近いかもしれません。
幹細胞の治療について
幹細胞といっても、アプローチは変わります。
外から塗るだけでは届かない部分もありますし、より深く作用させたいと考えたときには、やはり注射や導入といった手法が必要になってきます。
当院でも幹細胞培養液に含まれるエクソソームを導入するメニューがあるのですが、これはこれで効果を感じる患者さんも多くて、悪くない印象です。
またいくつかのクリニックで「自家培養線維芽細胞」の注射をおこなっているところがあります。
自分自身の細胞を採取して、それを培養してから肌に戻す、いわゆる肌育注射の一種として使われているようです。
もしこの方法が確立しているなら、自分の細胞を使うという意味では安全性が極めて高いですし、理論的には合わないリスクもほぼないはずです。
なぜ自分の細胞が安全なのか?
「なぜ自分の細胞が良いのか?」という疑問をもたれる方もいるかと思いますので、その点についてもご説明します。
たとえば肌が元々綺麗な人の細胞を使ったほうが、肌再生という点では効果が大きいかもしれません。
でも、そこにはリスクもあります。
他人の細胞を使うとなれば拒絶反応や免疫の問題がどうしてもつきまといます。
その点、自分の細胞であれば拒否されることもなく、副作用のリスクもかなり抑えられます。
病気になるような要因にもなりません。
つまり、安全性を重視するなら、自分の細胞を用いた治療というのはとても魅力的です。
もちろん、まだまだ研究段階のものや、臨床の蓄積が十分ではない部分もありますが、こうした再生医療的なアプローチが、皮膚の老化に対しても新しい選択肢になっていくのではないかと、個人的には思っています。
期待はもっていますが、あくまで当院は安全性重視で判断します
再生医療や幹細胞を使った美容治療には、正直かなり期待しています。
可能性は大きいですし、これまで難しかった悩みに対しても新しい選択肢になっていくと思っています。
ただ、あくまで当院は安全性を最優先にしているので、その技術が本当に安心して患者さんに届けられるものなのか、しっかりと見極めたうえで判断したいと思っています。
実際に世の中で一定数の症例が出て、医学的にも安全性が確認されてきた段階で取り入れていきたいです。
新しい技術を選ぶ立場として、そしてそれを患者さんに提案する医師として、「安心して受けられて、ちゃんと良くなるものを届ける」ことを何より大事に、今後も新しい医療に注目していきたいと思います。