ニキビ跡治療についてのシステマティックレビューと皮膚科医としての見解
2025年7月現在、ニキビ跡治療において様々な治療方法が確立されています。
多くの患者さんは、それぞれの治療方法をインターネットなどで「どれが自分に合っているか?」「どれがダウンタイムが短いのか?」を調べているかと思います。
ただし、理解していておいてほしいのは、インターネットの情報をすべて鵜吞みにしないこと。
新しい治療法・治療機器がどんどん出てきますが、医療機器メーカーは売りたいのであれも効きますこれも効きますと宣伝しますし、その機械を持っているクリニックのドクターも効きますと言いたいのでそのように書きます。
結果、どれもこれもニキビ跡にはよく効きますといったことになりますが、どの治療がスタンダードなのか、副作用はどうなのかといった議論が抜け落ちていることもあります。
そこで今回は、システマティックレビューをいくつか紹介しながら、ニキビ跡治療の歴史を紐解き、私自身の見解についてもお伝えしていきます。
システマティックレビューの比較
今回調査したシステマティックレビューは、以下の4つです。
- ①A systematic review of the comparison between needling (RF-needling, meso-needling, and micro-needling) and ablative fractional lasers (CO2, erbium YAG) in the treatment of atrophic and hypertrophic scars - PubMed
- ②Fractional CO2 -laser versus microneedle radiofrequency for acne scars: A randomized, single treatment, split-face trial - PubMed
- ③Comparison of Nonablative Fractional Erbium Laser 1,340 nm and Microneedling for the Treatment of Atrophic Acne Scars: A Randomized Clinical Trial - PubMed
- ④A Prospective, Nonrandomized, Open-label Study, Comparing the Efficacy, Safety, and Tolerability of Fractional CO2 Laser versus Fractional Microneedling Radio Frequency in Acne Scars - PMC
それぞれを簡単に説明すると、以下のようになります。
①「マイクロニードルVSアブレーティブフラクショナルを比較して、どちらも有効で有意差なし」
②「CO2フラクショナルVSマイクロニードルRFでどちらも有効で有意差なし。ただしダウンタイムがCO2フラクショナルの方が長い(2.3日)痛みはマイクロニードルRFの方が強い」
③「ノンアブレーティブフラクショナルVSマイクロニードルRFでどちらも有効、有意差なし。 MNRFの方がダウンタイムが短い」
④「CO2フラクショナルVSフラクショナルMNRFでどちらも有効。CO2フラクショナルの方がやや有効性が高い。副作用はMNRFの方が少ない」
これらの論文をまとめると、フラクショナルレーザー(モザイク・エコツー)とポテンツァ(MNRF)ではどちらもニキビ跡には有効といえます。
ただし深いニキビ跡にはよりCO2フラクショナル(エコツー)の方が有効性が高く、ダウンタイムの長さについてはMNRFの方が短いということになります。
なぜフラクショナルとMNRFを比較しているのか?
そもそも、ニキビ跡には従来フラクショナルレーザーの選択肢しかなかったのです。過去20年ほどはニキビ跡治療においてはフラクショナルレーザーがスタンダードでした。
しかしフラクショナルレーザーは確かに効果があるけれど、赤みが長引きやすい(特にノンアブレーティブでは)、色素沈着を生じることがある、というデメリットもありました。それほど重篤な副作用ではないので許容されていますが、もっとダウンタイムを抑えたものはないだろうか、という視点で様々なデバイスが使われてきました。
その中で、MNRFはフラクショナルと同等に効果があり、副作用が少なくなるものではないかという期待がされているので様々な研究がされて、論文になっています。
研究が進んでいるのでMNRF(有名なものはポテンツァ)もニキビ跡治療には安全性が高く使えるものだという認識です。
フラクショナルレーザーとの比較がされているということは、それだけフラクショナルレーザーの立ち位置が確固たるものだからです。
個人の見解として
私は結論として、ニキビ跡治療にはフラクショナルレーザー(当院ではモザイク・エコツー)が依然として主力であると考えています。
上記のようなシステマティックレビューはありますが、私自身、施術をしていて実際に感じることについてお伝えします。
ポテンツァを使う場合に深さ設定をしますが、多くは2mm程度の深さに設定します。
すると2㎜以上の深さの瘢痕には効果がなく、1㎜程度の深さがあるものには浅く刺さるので深い瘢痕には物理的に届かないので、やはりレーザーのほうが効率的です。
ですから、ニキビ跡に対しては当院ではフラクショナルレーザーをメインに使っていて、アブレーティブもの(エコツー)ノンアブレーティブなもの(モザイク)をダウンタイムを考慮して使い分けています。
なお、ポテンツァとフラクショナルレーザーの違いについては、以下の記事も参考になります。
ポテンツァとフラクショナルレーザーの違い|ニキビ跡に効果が高いのはどっち?
フラクショナルレーザーについて
改めて、フラクショナルレーザーについて簡単にお伝えしていきます。
フラクショナルレーザーは、レーザーによって肌表面に点状の微細な穴を開け、そこから熱エネルギーを肌の深部に届ける治療法です。
これにより、肌は自然治癒のプロセスを促進し、コラーゲンやエラスチンの生成が活発になります。
フラクショナルレーザーのメリット
フラクショナルレーザーの大きなメリットは、複数の肌トラブルに対応できることです。
- 凹凸のあるニキビ跡(クレーター状)
- 赤みや色素沈着を伴うニキビ跡
- 毛穴の開き
- たるみや小じわ
- 傷跡の修復
一度の施術で複数の悩みにアプローチできます。
フラクショナルレーザーをおすすめしたい方
フラクショナルレーザーは、以下のような方に向いています。
- クレーター状のニキビ跡が気になる
- 肌のハリ・弾力を取り戻したい
- 毛穴の開きや肌の凹凸を改善したい
- たるみ・小じわが気になってきた
- 傷跡の治療を検討している
フラクショナルレーザーとポテンツァの選択軸
当院としては、ニキビ跡への治療としてフラクショナルレーザーをおすすめします。
では、ポテンツァではダメなのか?というと、決してそうではありません。
ポテンツァはどちらかといえば、浅いニキビ跡や毛穴治療に向いています。
ニキビ跡への治療はフラクショナルレーザー、毛穴の開きを改善する治療としてはポテンツァと考えていただくと良いかと思います。
ニキビ跡でお困りなら当院のフラクショナルレーザーをお試しください
深いニキビ跡で悩まれている方には2025年7月の時点ではフラクショナルレーザーをお勧めします。
「7月時点」としているのは、今後より良い機器が出てくる可能性があるためです。
とは言え、当院はエビデンスの低い機器は採用しておりません。
「最新機器=効果が高い」とは言えませんので、エビデンスの高い機器を採用しています。
導入機器についての考え方については、以下の記事もお読みください。
ですから、キュアジェットなどのエビデンスがない最新機器は当面当院では取り入れることはありません。もちろんキュアジェットもこれから研究が進めばエビデンスも出てきて、副作用情報もわかってくるとは思います。そうなってから取り入れたいです。
今回は、ニキビ跡治療についてはエビデンスをみて当院で選んでいる治療機器を紹介しました。
実際には、患者さんの肌の状態を見て判断しますので、まずは一度カウンセリングにお越しください。